大慈悲       

 

人生は冷たい裁きによって成立するのではなくて、

いかなる氷をも溶かさずにはおかないという

大慈悲を畢竟依とすることによって成立するのであります。

かの国家社会に害毒を流すがごときいわゆる悪党が、

一朝にして、大地に合掌して妙好人となり、

懺悔感謝して世の光となるがごときは、

操行点を甲乙丙とつけ、優等児のみが意気揚々として表彰される世界や、

冷たい監督の眼ばかり光って、微塵の落度さえ許さない拘束や桎梏の中からは生れてはきませぬ。

かかる世界では、良い娘も悪い嫁となり、

悪い青年はますます悪くなるばかりであります。


                  (全集第17巻 歎異抄講話 第3章)