第二章 高等小学校訓導時代


 

「私がまだ二十二才の時、それは広島市を去ること六里、飯室小学校の首席訓導となって転任したばかりの時であった。だんだんと暗くなる心、何が何やらわからなくなった心、それでも世間的に先生らしい顔をしたい心、複雑な心を持った私は、私の心の声を聞かねばならない時が来た。二十二才、俺は今、二十二才、ああ、二十二才の秋だ。それが今日まで何をしたか。今、俺が倒れたら、汝の一生は何であったのか。

 私は矢も盾もたまらなくなった。恥ずかしながら、極端にまで地位と名誉、立身出世と女とのほしかった、気の毒なほど貧弱な子は、この子に課せられた、宿命らしい灰色の現実の中に自己を発見したのだ。

 暗い頃から起きて読書しはじめたのは、然り、二十二才の秋からであった。」